遺言書の種類


 公正証書遺言と自筆証書遺言

遺言書の種類には、大きく分けて「普通方式」と「特別方式」との2種類があります。
特別方式の遺言は、死亡が間近に差し迫った場合や、船に乗って遭難した場合など、極めて、限定的かつ例外的な状況のときにのみ使用されうるものです。
ここでは、通常の場合の遺言の方式である「普通方式」遺言の中で、実際によく活用されている「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」についてそれぞれの特徴について見ていきたいと思います。

公正証書遺言 自筆証書遺言
作成方法 証人2人以上の立会いのもと、遺言者が遺言内容を公証人に口授し公証人が筆記。これを遺言者及び証人に読み聞かせ又は閲覧させる。遺言者及び証人2人が署名・押印し、公証人が署名・押印する。 遺言者が、日付や署名を含め全文を自筆し押印する。
メリット ・公証人が作成するので、様式不備で無効になる恐れがほぼ無い。
・原本を公証役場で保管するので、偽造や紛失の恐れがほぼ無い
・亡くなった時に遺言書を裁判所で検認する手続が不要
手軽に作成でき、遺言の内容を秘密にしておける
デメリット ・公証人手数料などの費用がかかる
・公証人との事前打合せ、当日の内容確認などの手間がかかる
・証人の立会いが必要になる
・内容を公証人と証人に知られる
・偽造、変造、紛失のリスクがある
・専門家のチェックも無く、様式不備を見逃して最悪無効になってしまうリスクがある

このように、それぞれメリット、デメリットがあり、状況によって使い分けることになりますが、2020年7月10日に開始された「自筆証書遺言保管制度」や、2019年1月13日施行の「自筆証書遺言の要件緩和」により、自筆証書遺言のデメリットが大幅に改善されています。

<自筆証書遺言保管制度>
自筆証書遺言保管制度とは、文字通り自筆した遺言を法務局が保管してくれる制度です。
この制度が導入されたことで、作成した自筆証書遺言を法務局に預けることが可能になり、これまでの保管の問題が解決されました。また、自筆証書遺言の有無の調査について、これまでは遺留品などから遺言書自体を物理的に捜索するしか方法がなかったのに対し、今後は法務局に「遺言書保管事実証明書」の交付請求をし、遺言書の有無を確認。遺言書有りの場合は、さらに「遺言書情報証明書」の交付を請求し、遺言者の遺言内容を確認することが可能になります。そして「遺言書情報証明書」の交付申請が相続人等の誰か一人からされると、他の法定相続人や受遺者、遺言執行者にも遺言が保管されている旨が通知されることになっています。ちなみに、法務局に自筆証書遺言が保管されていた場合、これまで必須であった家庭裁判所での「遺言書の検認手続き」は不要になることも大きなメリットです。

<自筆証書遺言の条件の緩和>
2019年1月13日から改正民法の自筆証書遺言の部分の改正法が施行され、財産目録等の別紙についてパソコン作成が認められました。
これまで、自筆証書遺言は「全文」を自分で手書きしなければならず、大変な労力を伴いましたが、改正により、遺言書を「本文」と「別紙」とで区別し、「別紙」についてはパソコンなど手書きでなくてもOKとなりました。

<自筆証書遺言の要件緩和のポイント>

・遺言書の「別紙」として添付する財産目録等について、パソコンやワープロで作成可能
・不動産登記事項証明書のコピー、預貯金通帳のコピーを「別紙」として添付も可能
・あくまでも遺言書の「別紙」として添付される場合に限って適用される。
・「別紙」の全てのページに遺言者の署名、押印が必要。

このように「自筆証書遺言保管制度」「自筆証書遺言の要件緩和」により、これまでのデメリットが大幅に改善されたことから、今後自筆証書遺言が増加してくると思われます。


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行政書士

楠田 三彦

ご訪問ありがとうございます。行政書士の楠田と申します。私は30年以上家電メーカーに勤務してきましたが、人生の折り返し地点を過ぎ、改めて残りの人生で何をすべきかを考えた時、「人や社会への貢献が実感できる仕事がしたい」と考え、行政書士事務所を開業いたしました。                                      約10年間パナソニック㈱の管理職として多数の事業計画書を作成してきた経験から、補助金申請に係る「事業計画書の作成」を得意としておりますが、現在の超高齢化社会の諸問題に貢献したいとの思いから、相続業務にも注力していきたいと考えております。                                    皆様方のお困り事に寄り添い、「人や社会」に役立つ仕事がしたいと本気で考えておりますので、お困り事がありましたら是非お気軽にご相談ください。全力でサポートいたします。                                                                                                                                【保有資格】                          ・ファイナンシャルプランナー(AFP)                ・消費生活アドバイザー              

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